勉強会レポート | 医療法人 青峰会 くじらホスピタル

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勉強会レポート

院内勉強会「多職種が関与して改善に至った事例報告」

発表者:辻本聡(臨床心理士)・山本亜矢子(管理栄養士)・当事者

今回は、入院治療を通して回復した事例について、当院では初めて当事者同席のもとでの事例報告を行いました。

この当事者の方は、自ら治したいという決意をもって入院されました。医師や看護師との相談やコメディカルによる個別対応などを通して自己洞察を深め、病棟集団療法プログラムに積極的に参加することで症状への対処法(病気の理解、気分転換の仕方、認知の変え方など)を学び、それらを自ら実践していきました。

退院後は、デイケアとカウンセリングルームを利用しながら社会復帰を果たすなど、当院の治療資源のすべてを主体的に利用して回復した事例です。

勉強会では、管理栄養士が個別栄養指導の、臨床心理士が心理カウンセリングのプロセスをそれぞれ報告。多職種が日頃より記録しているカルテの情報を活用することが重要であると強調していました。最後に、当事者の方から、スタッフとの関わりを通して感じたことや考えたこと、治療に役立ったことについて発表があり、勉強会は拍手で終了しました。今回の事例報告を通して、改めて当院の治療メニューが有意義であることを再認識することができました。このように回復されている方がいることを励みとして、職員一同、次回の開催を目標に頑張っていきたいと思います。

公開講演会「心的外傷(トラウマ)をめぐって ~とくに心の癒され方について~」

講師:上村順子 医師

心的外傷(トラウマ)をテーマに、当院の上村順子先生が講演を行いました。PTSDの症状としては、再体験(フラッシュバック)、回避・麻痺、過覚醒などが代表的ですが、実際にはあらゆる精神症状を呈すると言っても過言ではありません。トラウマとなる外傷体験によって、人は突然傷つけられ、生命の危機に陥ります。それは圧倒的な無力感、孤独感、絶望感をともなう体験ですから、被害者は自尊心を奪われ、他者への信頼感を失い、それまで築いてきた世界観を破壊される危機にみまわれます。そして、本人の時間はそこで停止し、スイッチが入ると容易に当時の状態へともどってしまう。

治療では、「自分に何が起こっているか」を知るのは大切なことです。しかし、話すことでトラウマを追体験するかもしれません。また、本人たちは急激な変化を怖れますので、治療上どうしても聞かねばならないことはズバッと聞きますが、たいていはあまり聞かずにそっと付き合うようにしています。ときには症状の波に振り回されることも必要です。けれどもこちらからはなるべく動かないようにしていると、少しずつ関係性ができていきます。私はPTSDという疾病を通じて、人間の存在意義そのものを問われていると感じています。人を大切にするとは何かを問われているのかもしれませんね。

院内勉強会「個人情報と機密保持」

講師:中野 泰 先生(社会保険労務士・行政書士)

「個人データに該当する文書は鍵のかかる場所に保管しなければならないことが法律で義務付けられている」○か×か。医療機関で起こりうる事例について、トラブルになりやすい状況と法的解釈について学びました。講師は株式会社アイグロースの中野泰先生です。

個人情報保護はどれだけ徹底しても十分ではありませんが、やり過ぎてしまうと業務に支障をきたしたり、かえって患者様やご家族様にご不便をおかけしてしまうこともあります。法律的には、個人を識別できる情報はすべて「個人情報」に該当しますが、例えば診療録に関しては患者様と医師等と双方の個人情報という二面性があり、その取扱いについては事例ごとに異なってきます。

個人情報保護法が定めているのは、情報の保管方法や開示請求への対応方法ではなく、その指針であると言えそうです。個人情報の取り扱いについては最善の注意を払いながら、病院としてどこまで努力できるかを話し合っておくことが大切だと思いました。

医療連携室主催(第4回) 公開講演会「児童思春期にみられる抑うつ状態について~とくに希死念慮、自傷行為への対応」

講師:市川 宏伸先生(東京都小児総合医療センター顧問)

当院では医療連携室主催による公開講演会を定期的に行っています。
今回は、近年増加傾向にある児童思春期の精神疾患について、
再び市川宏伸先生をお招きして講演会を実施しました。

子どものうつ病は成人ほど多くはありませんが増加傾向にあります。子どものうつの場合、成人とくらべて抑うつ症状を言語化しにくく、不安やイライラ、成績の急激な低下、投げやりな態度、身だしなみへの無関心、家出や放浪を繰り返す、乱れた性行為に及ぶなどの特徴がみられます。

子どもを診る際に最も気をつけなければならないのが自殺の兆候に気付くことであり、「誰もわかってくれない」という孤立感、「生きている価値がない」という無価値感、やり場のない強い怒り、苦しみが永遠に続くという思い込みなどの心理傾向は、自殺のサインと考えることができます。

市川先生は、自殺という危機に際して治療者が堂々としているべきであり、きちんと子どもの気持ちを尋ねることが重要であると言います。最後には「絶対に自殺すると決めた人を100%救う方法はない」として、我々にできるのは「自殺したい」気持ちを変えられるかもしれないことであるとまとめられました。スタッフ一同、身が引き締まる思いで先生の講義に耳を傾けていました。

医療連携室主催(第3回) 公開講演会「うつ病の実態と治療 とくに入院治療の有効性について~自殺予防の観点から~」

講師:広瀬 徹也先生(公益財団法人神経研究所 晴和病院理事長)

今回の公開講演会では、
上村神一郎院長の恩師である広瀬徹也先生にご講演頂きました。

うつ病の治療に必要な要素としては、心身の休息、反復的自責思考を避けること、入院森田療法、散歩や運動、認知行動療法が挙げられます。一過性にはひきこもって臥床することが大事であり、合目的的です。ただし、ぼーっとしていられることが大事であって、身体が休んでいても頭が駆け巡っているようではいけません。そのようなときには、作業や運動をすることで頭に駆け巡る心配を追い払うということも有効ですし、誤った認知や行動の修正をはかることも必要です。

うつ病治療においては早期のリハビリテーションが重要です。それには入院治療の方が適していると思いますし、地域に開かれた完全開放の快適な病院を多くしていかなければなりません。また、入院は重症だからするものだという固定観念や、精神科病院入院への偏見を打破しなくてはいけませんが、これはとても難しいことです。

入院治療では、服薬の有無を確認できますし、処方の変更も容易に行うことができます。自宅では家族の理解を得るのが難しく、近所の目もあってゆっくり休息できない場合も多いものですが、入院では安心して休息できますし、スタッフとの関係によってある程度の人間関係も保持されます。また、同じ病気を持つ患者に出会うことで自分だけではないのだという安心感が得られることも、入院治療の意義の一つです。

わかりやすい資料と丁寧な解説で、参加者だけでなく当院のスタッフからも「入院治療の意義が理解できた」という感想が多く寄せられました。自殺予防において当院がどのような役割を担うべきかについて考えさせられる講演会でした。

医療連携室主催(第2回) 公開講演会「発達障害について」

講師:市川 宏伸先生(東京都小児総合医療センター顧問)

当院では、4月より児童思春期の患者様の受け入れを強化しています。そこで、避けては通れないのが「発達障害」の診断と治療です。発達障害の特徴を一言でいうと「こだわり」ですが、「自閉症スペクトラム」と呼ばれるように、その状態像にはかなりの幅があります。性格か、他の疾患の症状か、それとも発達障害か。何らかの脳機能障害の存在が前提とはされていますが、いくつかの仮説があるのみで他疾患との境界線も実に曖昧であるため、個々の状態像や発達過程を詳細にみていく必要があります。

発達障害という名称は、現在ではかなり周知されるようになりましたが、かえって学校や保健所等で「発達障害かもしれない」と指摘されることで困惑する家族も多いようです。

医療につなげるためには、保護者の気持ちが大事だと市川先生は言います。子どもの特徴にうすうす気づきながらも、自身の育て方や周囲からの非難などに悩んで打ち明けられないような親には、一方的に説明してもなかなか受け入れられません。親が話し始めるまで待つという姿勢と、保護者と子どもをまとめて支援するという視点が大切です。「こういうところはみんなよりもすごいんだよ」と本人の得意なところを強調してほしいと話す市川先生の温和な語り口が印象的でした。

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医療連携室主催(第1回) 症例検討会 開催 60名の医療関係者が参加

11月30日、くじらホスピタルの診療内容を広く知っていただくために、
医療関係者に向けた「第1回 症例検討会」が開催されました。
前半は症例発表、後半は対談が行われ、医師や看護師など約60名の医療・福祉関係者が参加しました。

症例発表では、あいクリニック神田の鬼頭諭医師と当院の早稲田正医師が連携を行った症例について、それぞれの観点から発表と検討を行いました。両医師からは、診療やカウンセリングでの経過や入院期間中の様子が発表されました。参加者も熱心に聞き入り、カウンセリング前後の変化や薬の選択などについて、質問や意見が出されました。

次に、あいクリニック神田の西松能子医師と当院の上村順子医師が、「自傷行為を考える」をテーマに対談を行いました。リストカット、大量服薬などの自傷行為は、その原因や表現の意味が実にさまざまです。「リストカットは症状の1つであるという認識を持って、粘り強く患者様のつらさに寄り添うのが病院の役割(上村医師)」、「1週間に1回ご来院いただいても、生活全体から見たらほんの少しの時間に過ぎません。普段の生活が大切なのです。その点でも24時間体制でサポートできるくじらホスピタルの入院治療には大きな期待を寄せています(西松医師)」といった意見が交わされました。

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地域講演会「パートナー間の暴力 ~予防と対策、その危険性について~」

総合区民センター(江東区大島)にて地域講演会を実施しました。
「キレる子どもへの接し方」に続く、地域講演会の第2回目です。
今回は、理事長の上村順子先生が、パートナー間の暴力について講義を行いました。

私たちは、嗜癖(アディクション)に満ち溢れた社会で暮らしていると言ってもよいでしょう。自分が誰より上で誰より下かという尺度で自分自身を捉え、そして自分よりも弱いものを傷つけないと生きていけないような社会システムの中で、私たちはアルコール、仕事、ギャンブル、買い物、そして緊密な人間関係などの刺激に埋没することで、本当の自分を見ないようにして、日々をうまく乗り切ろうとしています。

アルコール依存により暴力をふるう男性には、他者にとても気を使い、穏やかで優しく、「ノー」と言えない人が多いように思います。そんな真面目な人が、「周囲に合わせなきゃいけない」「落ちこぼれちゃいけない」と仕事に過剰適応しようとし、それがうまくいかなくなった時に暴力などの問題が出てきます。暴力は嗜癖ですので、一度始まるとなかなか止まりません。たいがいは「おまえはダメだ」「おまえには何の能力もないんだ」「おまえが一人で何かしようなんて無理なんだ」という情緒的な暴力と同時に行われます。相手のことを否定することによって自分を正当化しようとするわけです。

このような否定的な言葉を何度も言われ続けていると、女性はその言葉が真実であると思いこまされていきます。そのうちに、「あの人は・・・」と相手の話ばかりになり、「私は」を主語とした自分の感情や気持ちや考えを話せなくなります。「自分には何もできない」という無力感と、「自分がどうしたいのかわからない」という感情の喪失により、女性は暴力から逃げることができなくなってしまうのです。
暴力は一種の洗脳ですから、そこから脱するためには自分の言葉を発することが大切です。黙っていてはいけない。自助グループ等で人の話を聞いたり、いろいろな情報を集めたり、自分の気持ちを自分の言葉で語ってみることをお勧めしています。

パートナー間暴力というのは、とても今日的なテーマだと思います。たぶんこれからいろいろなことが日本で起こってくると思いますが、その中で、何が自分の中で起こっているのかを知るために、自分自身の視点や感性を大事にしてほしい。身の回りの人間関係を見直す、自分が何を望んでいるのか考えること、今この時に何が自分にできるのか、必要なのかを振り返ってみる。そういう小さいことから始めて頂きたいと思います。

質疑応答の時間が延長したにも関わらず、皆さん最後まで熱心に聞いて下さいました。「深い気づきを得ました」「心の整理ができました」「勇気づけられました」と、日頃の人間関係を振り返りながら参加されているようでした。順子先生のお人柄が見られたところで、和やかに終了しました。

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院内勉強会「摂食障害の家族対応」

講師:中村伸一先生(中村心理療法研究室)

中村心理療法研究室の中村伸一先生を招き、
院内勉強会を行いました。テーマは「摂食障害の家族対応」です。

「摂食障害では、例えば『母親が子どもに食べさせようとするほど、本人は絶対食べないと意固地になる。すると母親は父親に援助を求めるが、父親は病気だから仕方がないとかお前のせいだと言って、関わろうとしない。母親はそんな父親にますますイライラして、さらに本人への態度を強め、本人はさらに拒絶するようになる。』という悪循環がよくみられます。家族療法の立場では、家族の誰かが悪いのではなくて、この悪循環の結果として子どもが患者とみなされるのだと考えます。」

その他にも、摂食障害の家族の特徴として、「完璧な家族」「過保護な家族」「混沌とした家族」という3つのパターンを挙げ、それぞれの違いについて詳しく教えて頂きました。

家族療法は、アメリカ精神医学会の摂食障害のガイドラインにも記載されており、とくに「若年性の拒食症患者において個人療法よりも予後がよい」という結果が示されているそうです。本人の行動だけでなく、家族との関係性も視野に入れることで治療経過が違ってくるとのことで、日頃の関わり方について考えさせられる勉強会になりました。

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地域講演会「キレる子どもへの接し方~子どものこころと栄養管理~」

ティアラこうとう(江東区住吉)にて地域講演会を実施しました。
「当院を地域の方々に知ってもらいたい」という趣旨で企画した無料の講演会です。
記念すべき第一回目は、副院長の岡田先生と管理栄養士の山本さんが講師を務めました。

『「どうせあなたのことだからこう思っているんでしょ」というように、大人が自分の考えや思いを伝えてしまっては子どもとのコミュニケーションは成り立ちません。「最近、こういうふうに見えるけど、あなたはどう思っているの?」と、自分を客観的に見る自分(客体)に働きかけるような声かけが大事です』と岡田先生。

『低血糖症になると血糖値の急上昇と急降下が激しくなり、イライラや情緒不安定を引き起こします。白米ごはん、精製パン、うどん、フライドポテトなどは糖分の分解が早いので要注意です。急激に血糖値を上げない、玄米ごはん、胚芽パン、そば、肉、魚、さつまいもなどの低GI食品を、1日3回規則正しく摂取することが大切です。』と山本さん。

当日はあいにくの小雨でしたが69名の方々に参加して頂き、ほぼ座席が埋まりました。「時間が短かった」「もっと話を聞きたかった」という感想が多く、概ね好評を得ることができました。次回は2月に、「キレるパートナーへの接し方」を予定しています。

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